知らないでは済まされないWEB領域の法務【第四回】は、『著作権』に関する内容で投稿します。

WEBにとどまらず広告領域全般で、委託者と受託者の間で最も揉める事項になります。

これは『著作権』に対しての双方の主張が『財産権』と『人格権』で分かれている点になります。

この『財産権』と『人格権』をきちんと理解することが大切です。

 

本題に入る前に、1つおもしろい事例がありますので、少しお考えいただければと思います。

北海道の有名なお土産の「白い恋人」が、吉本興業のパロディ商品「面白い恋人」を訴えたというニュースがありました。

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この裁判、どのような判決になったかご存知でしょうか?

「お互い知名度が上がって良かったね!」という結果となりました。

では、上記パッケージで、どこが著作権になるかおわかりでしょうか?

答えは、コピー、デザイン、イラストになります。

そう、ほぼ全てに著作権があります。

本題に戻ります。

 

著作権の定義は下記になります。

著作権(copyright)とは、言語、音楽、絵画、建築、図形、映画、コンピュータプログラムなどの表現形式によって自らの思想・感情を創作的に表現した著作物を排他的に支配する、財産的な権利である。著作権は、特許権や商標権にならぶ知的財産権の一つとして位置づけられている。 ※Wikipedia参照

簡単に言えば、著作者を守る権利です。

著作者の定義は下記になります。

著作者 著作物を創作した者。共同著作物については、共同で創作に寄与した者全員が一つの著作物の著作者となる。
法人著作 次の要件を満たす場合には法人等が著作者となる。
1.法人等の発意に基づくもの
2.法人等の業務に従事する者が職務上作成するもの
3.法人等が自己の名義で公表するもの
4.作成時の契約、勤務規則に別段の定めがないこと

共同で創作~という点が委託者の主張としても考えることが出来ますね。

 

次に著作者の権利についてですが、著作者の権利は上記にも記載した2つの権利があります。

財産的な利益を保護する『著作権(財産権)』と人格的な利益を保護する『著作者人格権』とです。

 

『著作権(財産権)』は、その一部又は全部を譲渡したり相続したりできます。

譲渡及び相続した場合、権利者は著作者ではなく著作権を譲り受けた人、相続したりした人になります。

『著作権(財産権)』には下記の権利があります。

複製権 著作物を印刷、写真、複写、録音、録画などの方法によって有形的に再製する権利
上演(演)権 著作物を公に上演したり、演奏したりする権利
上映権 著作物を公に上映する権利
公衆送信権 著作物を自動公衆送信したり、放送したり、公衆送信された著作物を受信装置を使って公に伝達する権利
口述権 言語の著作物を朗読などの方法により口頭で公に伝える権利
展示権 美術の著作物と未発行の写真著作物の原作品を公に展示する権利
頒布権 映画の著作物の複製物を頒布する権利
譲渡権 映画以外の著作物の原作品又は複製物を公衆へ譲渡する権利
貸与権 映画以外の著作物の複製物を公衆へ貸与する権利
翻訳権・翻案権 著作物を翻訳、編曲、変形、翻案等する権利
二次的著作物利用権 著作物を原作品とする二次的著作物を利用について、二次的著作物の著作権者が持つものと同じ権利

 

一方、『著作者人格権』は、著作者だけが持っている権利です。

譲渡したり、相続したりすることはできません。

これを一身専属と言います。

この権利は著作者の死亡によって消滅しますが、著作者の死後も一定の範囲で守られることになっています。

『著作者人格権』には下記の権利があります。

公表権 いつ、どのような方法で公表するかを決めることができる権利
氏名表示権 著作者名を表示するかしないか、するなら実名か変名かを決めることができる権利
同一性保持権 自分の著作物の内容又は題号を自分の意に反して勝手に改変されない権利

 

上記の話に戻すと、揉める点として下記のように整理できます。

  • 委託側は、『著作者』を『共同』と定義し、『著作権(財産権)』を主張
  • 受託者は、『著作者』を『法人著作』と定義し、『人格権』を主張

整理すると矛盾を感じるかと思います。

財産権を譲渡しても人格権がある為、著作者にも人格権が残る。

これでは揉めますよね。

大手企業の契約書では、著作者人格権が法律上分属できない為、著作権者が自由に著作物を利用することを目的として、『著作者人格権の不行使特約』を挿入し、リスク回避を図っています。

委託者は、受託者と著作権譲渡契約を締結する際には、『著作者人格権の不行使特約』を挿入することが良いでしょう。

 

今後、国内市場は人口の減少などの要因により右肩下がりも想定されます。

そんな中、優秀な受託先を逃すことは命取りになる可能性もあります。

委託側、受託側、共にWin-Winの関係こそが、これからは大切だと思います。